T本嬢内定祝い〜ageHa潜入レポート(その2)

われわれ6人は有楽町線に乗り込み、池袋から新木場へと向かった。途中、どっかの駅でコスプレ?をした連中が大挙して乗り込んでくる。「ありゃあなんだ、あいつらも新木場行くのかな」「ageHaってそういう場所なの?」的な会話を交わしていると、I鼻が、「そういやもうすぐハロウィンじゃん。で、今日ってハロウィンに最も近い週末じゃん。て、ことは、ageHaも仮装パーティー的なイベントをしてる可能性はあるぜ。」という内容の発言をした。そう考えて周囲を見渡すと、やたら陽気な白人とか、オレンジ色ベースの服装の奴とか、どことなくカボチャを思わせる人などがわらわらと目につきだした。「て、ことは…」神妙な顔でI田が口を開く。「ひょっとして俺らって、まったく空気を読めていないすげー寒い団体なんじゃねーの?こんな普通の格好でさ。」これを聞いた私は、「やたらハードル高い日に初挑戦しちまったな」という思いを抱き、早くも後悔し始めるのであった。
新木場の駅に着くと、案の定ほとんどの連中が仮装している。駅で着替えを始める奴もいる。私は自分が間違った場所に紛れ込んだことを確信した。
駅を出ると、外はかなり強い雨であった。皮肉なもので、まったく心の準備ができていない私も傘だけは周到に準備していたので、大人数で相合傘をしながら会場へ向かう。名も知らぬ橋に差し掛かったとき、われわれは信じられないものを目にしたのだった。「並んでるよオイ…」橋の中ほどからageHaと思しき建物まで、ついぞ見たことのない大行列が形成されていたのである。すでに時刻は29日の午前1時近く。このぶんではいつ会場に入れることやらわからん、というイヤな気分がわれわれの間に充満した(ように私は思う)。並んでしばらくすると、われわれは、行列などお構いなしに会場を目指す人々もいることに気づいた。この謎もI鼻によって、「たぶんあいつらは前売り券とか買ってるんでしょ」という納得する以外にない結論を与えられ解決。それにしても、すいすい進んでいく奴らにおける白人の割合が高いな、やっぱり奴らはパーティーとかやりなれてるからだろ、ていうか「パーティー」って何なんだよ。というような、人種的・階級的偏見に満ち溢れた会話が繰り広げられた。私は、そういえば昨日の午後読んだ『本格小説』のイントロダクション部分、「本格小説の始まる前の長い長い話」に東洋人を必要以上に見下すアメリカ人の金持ちが出てきたな、あいつの名前はなんだっけ、思い出せん、というようなとりとめのない連想に没入しそうになっていた(ちなみに正解はゴールドバーグ)。
そんなこんなで小一時間も経ったころ、I田が「今からできる仮装ってねーかな?そうだ、誰かペン持ってない?俺の額に目を描いてくれよ」などと言い出した。どこからか出てきた水性ボールペンを使ってI鼻がI田の額に邪眼を描きつけた。私は「いったいこれは何だろう?」と思ったが黙っていた。しばらくするとI田が「こういうのは中途半端が一番よくないな。ほっぺたにも描いてくれ。ていうかどんどん描いてくれ」と錯乱したようなことを言う。I鼻はいちいち付き合って両の頬、手の甲などにいくつもの眼を描いていった。そうこうしている間に「池袋ウエストゲートパーク」に出てくるブラック・エンジェルズみたいな連中とすれ違ったりしながらようやく会場入り口にたどりついた。しかし、ここにも予想をはるかに凌駕するアクシデントが待ち受けていたのだった。(その3へ続く)