うさぎドロップ 5 (5) (Feelコミックス)

うさぎドロップ 5 (5) (Feelコミックス)

この漫画にはすごいところがいろいろあるが、特にすごいと思うのは親子関係の非対称性を当事者がどう受けとめて生きるかっていう問題に取り組んでいるところ。第一部の序盤でダイキチの母親が漏らした「犠牲」という言葉がそれを象徴しているわけだが、その言葉を聞いてしまったダイキチの、母に対するわだかまり、その解消、そしてりんを育てる自分の人生をどう捉えるかという新しい問題。それらについては4巻ラストでほとんど感動的な解決が描かれていて、私は満足しかけた。が、宇仁田ゆみはもっと先を見ていたんだなと思った次第。5巻p.124右下のコマでりんが言いかけた言葉は何だったのかと考えれば、親子関係の非対称性の問題はりんの意識の中にもきっちりと引き継がれている(これこそ『美味しんぼ』がちゃんと描くべきだったことなんだよなあ)。それに加えてepisode.30では宇仁田ゆみの真骨頂的な描写も出てくる。「たぶんこれが正解だろ…」というダイキチのモノローグのもつ圧倒的なリアルの手ざわり。どこまですごいことになるのか見届けたい。