なんということもなく流れる日々である。いや、俺が流しているのだ。日々を。

会社に行って仕事をする。めちゃくちゃおもしろいというわけではないが死ぬほどつまらないということもない仕事をする。社内の人間関係だって悪くないし、取引先とのやりとりにも慣れてきた。適度に雑談もできるようになった気がする。この若さにしては腹が出てきてしまっているが肥満というほどじゃない(はず)。休みの日には友人と会ったりマンガを読んだり映画を観たり本を読んだりする。適度に泣いたり笑ったりする。悪くないじゃないですか。まったく悪くないじゃないですか。

でも、ときどき、「なにか大切なことを忘れてるんじゃないか?」って、もう一人の自分が尋ねてくるんだ。俺は耳を塞ぐ。忘れてなんかないんだ、と言いきることができないから。その声が聞こえないように耳を塞ぎつづけるんだ。なにか大切なことがあったこと、それ自体を忘れてしまうまでは。


…………


19日の仕事が終わった後、飲み会を経て日付が変わるころ自宅に着いた。ドアを開けて流しの明かりを点けようとする。点かない。数回ひもをカチャカチャやるがダメ。よく見ると、朝スイッチ入れて出たはずの除湿器も不自然な状態で停止してる。と、いうことは…


忘れていたァーっ! 電気料金を支払うのを完全に忘れていたァーっ! それもほとんどまる2ヶ月にわたって! 


というわけで、送電が停止されていた。財布には500円くらいしか入ってなかったのでいま払うのは無理。暗いままの部屋の中を携帯電話の明かりを頼りに移動して、手探りでパジャマに着替えて布団を敷いてそのまま寝た。今朝、10時くらいに起きて冷たいシャワーを浴びる(ガスの供給はとまっていないが、給湯器の電源がつかないわけ)。泡立ちにくい石鹸がなんとも惨めな感じである。外の光で明るくなった部屋で着替え、外出。ATMで金を引き出して電気料金を払い、事業所に電話した。電話の向こうのおにいさんが「入金を確認しました。1時間ほどで送電を再開します」と言ってくれたときマジでほっとした。祝日なのに働いていてくれてありがとう。世界は平和島。みたいなピースフルな気持ちになりました。耳を塞いでる場合じゃないよ、大事なことは忘れないようにしよう。特に公共料金はちゃんと払わないと困ったことになっちゃうよという覚え書きであった。

なんで銀行引き落としにしないのかということから自分のなかにある「定住の忌避」みたいな感覚についてちょっと考えたがまた今度書こうと思う。電気のおかげで洗濯も終わったので、でかけよう。