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- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2007/03/13
- メディア: 単行本
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私が通っていた高校の国語教師にはアクの強いスタッフがそろっていたが、なかでもA西という教師はすごかった。高一最初のA西の授業で古文の品詞分解を命じられ、私がなんとなくで答えたところ、「なんだそれは。そんな適当なこと言ってお前は責任とれるのか。俺はそんなことを教えたおぼえはない」とぶち切れる理不尽さ。小林秀雄の文章を引用した評論を解説しているとき、「その評論の筆者がいかに小林秀雄を読めていないか」ばかりを解説してしまう過剰な批評性。午後の授業が突発的に中止、半休になるというお知らせのとき、「よかったですねー諸君。これで家に帰ってせんずりこけますね」といってひとりで爆笑するという幼児性。など、とてもまともな教師とは思えない特徴ばかり持った男だった。しかし私はなぜかこのA西をなかば尊敬していた。
そんなA西が絶賛していた小説が中島敦「山月記」である。普段は生徒を罵倒することにしか使われないA西の豊富なボキャブラリーが、何かを絶賛することに対して使われることがあるのだな、と、当時の私はそんな部分に感動していた。のだが、森見登美彦によるリミックスというか本歌取りというかトリビュートというか翻案というか…を読んで、なるほど「山月記」は青春小説の傑作であったのだな、ということを理解し、同時に、そのような小説を絶賛していたA西についての理解も深まった、ような気がした。