風に舞いあがるビニール袋もしくは連想ゲーム[4/29追記]

ブックファースト渋谷店でミーハー心を発揮して柳美里のサイン会をひやかし、ああテレビで見たのとおんなじ顔だ、というほとんど意味のない感想を抱き(文章は昔「月刊カドカワ」で何か読んだくらい)、移動して担々麺を食いなどしたあと帰途につき、週末特有の高揚した気分で歩いていた。


視界上方をふわふわと漂っているものがあったのでよく見るとスーパーのビニール袋であった。強風で舞いあがったもののようだ。重力の法則によりやがて落下してくるのだが、その度に偶然バスやトラックなど大型車が通りかかり再び舞いあがる、ということが2、3度続いた。青黒い空を背景にして、その袋はクラゲのようだった。クラゲといえば枕草子に「海月の骨ななり」というオシャレな返しセリフがあったなあ、あれの品詞分解も入試頻出事項であった。でもどんな問いかけに対する返しだったっけ?覚えてない。というようなことを考えていたらいつのまにかビニール袋は道路に落ちていた。そうしてみるとやはりゴミだった。


空を飛ぶゴミ袋といえば、『つるピカハゲ丸』(このタイトル、今だったら通らないだろうな)の15巻を思い出す。ハゲ丸一家がスーパーの袋を何枚もつなぎあわせて熱気球をつくり、海外旅行に出かけるという話が載ってる。気球って夢があるよね。『団地ともお』でコンビニの兄ちゃん三兄弟が出てくる話があるけど、父の遺産のうち気球を相続した長男のセリフ「親父はおれたちにこの世界まるごとを遺してくれたんだぜ/こんなの使いきれないよなあ!」(確かこんな感じ)は思い出すだけでなんか幸せな気分になれるし。息子にこんなことを言ってもらえたら親父冥利に尽きるだろうな。そういや「気球にのってどこまでも」という合唱曲があった。小5のときに歌った。校内合唱コンクールで、曲がなにか別のものに決まりかけていたとき、音楽の先生が「3組ほどの力がありながらそんな簡単な曲で満足しているのは怠慢です!」みたいな主張をして、結局「気球にのってどこまでも」になったのだった。まあいい曲だったからよかったけど、どんな理由だよ。やりたいようにやらせてもよかったんじゃないのかなあ。というように考えると、ゴミ袋というかゴミであるところのビニール袋を使って夢いっぱいの気球をつくっちゃうハゲ丸一家の話はより感動的なものに思える。


ところでなぜ私がハゲ丸15巻と特定できたのかといえば答えは簡単で、15巻しか読んだことがないからだ。たしか向かいの家に住んでいる3つ上のお兄さん(年上の男性くらいの意。そこまで複雑な家庭環境では育っていない)にもらったのだった。あの人は、なぜ15巻だけくれたのだろう。いつかその答えがわかったら、別に何になるわけでもないが、なんかいいな、と思う。