「ユリイカ」3月号

貴志祐介特集より町田康との対談を読む。貴志祐介は昔『黒い家』を読んだくらいなのでなぜこの組み合わせなのかまったくわからなかったが、『黒い家』映画化時にマーチダ先生が役者として出てたりとかの関係はあったらしい。貴志の「自分には絶対書けないものを書いている人」とスリリングな話をしたい、という希望で実現したということで、その目論見は成功していると思う。
「作者というものがその作品の中の悪に責任を負っているのかということ、あるいは、作者の人間性の範囲がどこまで及ぶものなのか」「まったく自分に根拠のないものが書けるのか」という町田の問いをめぐる部分は非常に興味深い。作品のモラルと作家のモラル、という問題については、「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」2008年9月20日放送分の「男子のための『花より男子』特集」の議論がすごく重要なんだが、これを踏まえて何かを考えよう。何かを、いつか。

他にも、「『パンク侍、斬られて候』を書いてるとき頭頂部がベコベコになってた」話とか、「『人間小唄』の登場人物の名前はなんて読む」の話が面白い。特に後者。町田のなかでは「糾田両奴」「蘇我臣傍安」はそれぞれ「ただしだてると」「そがのおみはたやす」と読むイメージだが、読者がそれぞれ好きに読めばいいと思ってる、ということらしい。私は読んでるあいだ、読めないんだけど読み方を設定しないと進まないので「ただしだりょうど」「そがみぼうあん」と読んで進めていた。それを「イメージ」というくらいの緩い縛りで最後まで書けるのがすげーと思った。貴志祐介の近作を何か読んだあとでもう一度読む。など。

あと「群像」を買ったら古谷利裕の短編が載ってるらしくて楽しみなのでゆっくり読みたい。